地域包括ケア病棟の看護師ってどんな仕事・役割があるのかな?
今回はこんな疑問にお答えします。
この記事は総合病院の地域包括ケア病棟に4年間勤務した現役看護師が執筆しています。
この記事を読めば
- 地域包括ケア病棟で働くの看護師の具体的な仕事内容
- 地域包括ケア病棟で働くメリット・デメリット
- 地域包括ケア病棟に向いている看護師
がわかります。
とはいえ
地域包括ケア病棟ってリハビリをすんでしょ。
回復期リハビリテーション病棟と何がちがうのの?
と疑問に思う方も多いですよね。
そこで今回は回復期リハビリテーション病棟との違いも具体的に解説。
病棟の特徴を知れば自分が働きやすい病棟なのかがわかります。
職場選びに悩んでいる方は必見の内容です。
ゆるく働ける病棟
地域包括ケア病棟とは
地域包括ケア病棟とは在宅へ退院することを目標に、治療、看護、リハビリを中心に行う病棟。
対象となるのは
- 急性期治療が終わって状態は安定したが、すぐに退院することには不安のある患者さん
- 緊急入院となった専門的な治療が必要ない急性期患者さん(軽度の肺炎など)です。
です。
地域包括ケア病棟の対象となる患者さん
地域包括ケア病棟は症状が落ち着いている患者さんが入院し、最終的には在宅復帰を目的として治療に取り組んでいます。
入院の条件となる対象疾患はありません。
そのため様々な特徴の患者さんを受け入れています。
具体的には
- 性期病専門的な治療は終了したが経過観察が必要な患者さん
- 在宅復帰・施設復帰に向けてリハビリが必要な患者さん
- 入院によるADLの変化があるため福祉サービスの調整が必要な患者さん
- 在宅療養中、病状が悪化し一時的な入院が必要となった患者さん
- 回復期リハビリテーション病棟、療養病棟への転院を待機中の患者さん
- 家族のレスパイト目的の患者さん
- お看取り目的の患者さん
です。
「性期病専門的な治療は終了したが経過観察が必要な患者さん」というのは、例えば
例
胆管炎で入院。
内視鏡によるステント留置を終えて現在は抗生剤のみで治療している方。
のことです。
私がいた病棟では治療が抗生剤だけになったら受け入れることが多かったよ。
実際にどんな疾患が多いの?
私が地域包括ケア病棟で働いているときに多かった患者さんの疾患です。
- 骨折全般
- 肺炎
- 尿路感染症
- 専門的な治療が終わって抗生剤のみとなった疾患
他には疾患ではありませんが、
- 長期の入院によってADLが変化しリハビリが必要になった患者さん
- 福祉サービスの調整が必要な患者さん
の入院も多く受け入れていました。
脳梗塞や脳出血の脳外疾患の患者さんは回復期リハビリテーション病棟の対象ととなることが多く、地域包括ケア病棟での割合は少なかったです。
地域包括家病棟と一般病棟との違い
地域包括ケア病棟と一般病棟の違いをまとめました。
地域包括ケア病棟 | 急性期病棟 | |
---|---|---|
入院目的 | ・急性期治療後の患者さんの在宅復帰を目指す ・在宅療養中に悪化した患者さんの入院 | ・急性期疾患の治療 ・手術 ・身体に異常がある場合の検査 |
入院日数上限 | 最長60日 | なし |
病棟で行うこと | 患者さんが持つ疾患に対する治療とリハビリテーション | 急性期疾患の治療 |
一般病棟は主に検査入院や急性期疾患の治療、手術など治療を目的としています。
一方地域包括ケア病棟では急性期治療を終えた方が、在宅復帰を目指し経過観察やリハビリ目的で入院することが多いのが特徴です。
地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟との違い
地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟はどちらもリハビリを目的とした患者さんを受け入れる病棟であるため、違いに悩む方も多いでしょう。
それぞれの違いをまとめました。
地域包括ケア病棟 | 回復期リハビリテーション病棟 | |
---|---|---|
入院目的 | ・急性期治療後の患者さんの在宅復帰を目指す ・在宅療養中に悪化した患者さんの入院 | ・急性期治療後の患者さんの在宅復帰を目指す |
対象疾患 | なし | ある |
入院日数上限 | 最長60日 | 最長180日(疾患による) |
病棟で行うこと | ・疾患に対する治療 ・リハビリテーション | ・「発症以前の状態」を目指すリハビリテーション |
地域包括ケア病棟は、回復期リハビリテーション病棟と違い、対象疾患や医療区分の縛りがありません。
そのため、幅広い状態の患者さんを受け入れているのが特徴です。
また地域包括ケア病棟の入院日数上限は60日と定められており、回復期リハビリテーション病棟よりも短くなっています。
一方回復期リハビリテーション病棟はリハビリで状態改善を図る事を目的としているため地域包括ケア病棟より抗生剤などの医療行為は少ないです。
回クフ期リハビリテーション病棟について詳しく知りたい方は
に詳しくまとめてあります。
地域包括ケア病棟で働く看護師の仕事内容
地域包括ケア病棟の看護師の仕事を紹介します。
転入・入院の受け入れ
対象の患者さんの受け入れをします。
地域包括ケア病棟に入院となる方は退院調整が必要なことが多いです。
そのため入院の時の問診と合わせて
- 退院先の希望
- 自宅の生活環境
- もともとのADL
- 患者・家族がどこまでのADLを希望しているか
- もともと利用していた福祉サービス 等
などを家族、患者さんに確認します。
入院時から退院をみすえた情報収集をするのが特徴
わい
日々のケア
検温、抗生剤の投与、褥瘡処置などをおこないます。
リハビリ目的で入院している人の場合、日常生活の中でもリハビリを行います。
具体的には
- トイレ動作
- 移動
- 歩行 など
です。
介助は最小限にして、患者さんが自身で行えるよう声かけや指導をします。
退院の支援
患者さんの退院先は施設なのか、自宅なのか、本人・家族の思いや状態から退院先を考え支援を行います。
それぞれの退院先に安心して退院できるように支援をしましょう。
在宅への退院なら患者さんの状態に応じて
- 家屋調査の実施
- 外泊の提案
- 内服薬の自己管理の方法の検討・評価
- 必要な福祉用具用具の検討
- おむつやとろみの付け方などの家族への指導
- 訪問看護導入の検討
- デイサービスなどの福祉サービス導入の検討 等
などを行います。
施設の場合は
- 施設が求めるADLの確認
- 施設退院を目指した生活習慣の獲得
- 施設スタッフへの指導 など
を行います。
他にも家族を交えて多職種カンファレンスを行って、皆で情報を共有しながら方針を決めたりすることもあるよ。
患者・家族の不安に関する支援
退院にむけて患者・家族がどんな不安をかかえているのか確認をして支援をします。
悩みや不安を解決できるようアプローチしましょう。
生活面の不安ならMSWへ情報共有をしたり、技術面の不安ならパンフレットの作成や指導を行ったりして解決を図ります。
普段の会話でポロっと不安を伝えてくれることが多いよ。
患者さんだけでなく、家族ともコミュケーションをとっておくと安心。
多職種連携
地域包括病棟では多職種との連携が重要です。
適切な退院支援を行うために多職種で情報を共有して行動していくことが大切だからです。
その中で看護師は多職種を繋ぐ中核的な関わりをします。
例えば患者さんから得た情報をこのように繋いでいきます。
情報 | 多職種へのアプローチ |
---|---|
布団で生活をしていた | PTへ床からの足り上りが可能か評価を依頼。 難しければMWSへベッドの導入を相談。 |
お風呂の介助が必要 | MWSとデイサービスor訪問入浴の導入を相談 |
昼間は家族がいなくて薬が飲めない | 医師へ内服薬を朝・夕にまとめられるか相談 |
他にも私の病棟では1回/週、退院にむけて多職種カンファをしていたよ。
患者さんと接する機会の一番多い看護師だから「退院への課題」が見えやすく、中核的な役割を担うことが多いです。
病棟看護師の1日の流れ
地域包括ケア病棟の看護師の1日の流れです。
日勤
勤務時間:8:30-17:15
時間 | 業務内容 |
---|---|
8:00-8:30 | 情報収集 |
8:30-9:00 | 申し送り |
9:00-10:15 | 保清 陰部洗浄、褥瘡処置など |
10:15-11:3030 | 検温、記録、処置転入or入院の受け入れ |
11:00-11:30 | おむつ交換・トイレ誘導 |
11:30–13:00 | 食事準備デイルームに患者さんを誘導してました配膳・食事介助 |
13:00-14:00 | 休憩 |
14:00-15:00 | 多職種カンファレンス残りの検温、処置 |
15:30 | おむつ交換・トイレ誘導 |
16:30 | 申し送り |
17:00~ | 記録 |
退勤時間は平均で18:00-18:30くらいでした。
業務内容が少ないように見えますが、実際はナースコール対応やセンサーマット対応が多く非常に忙しいです。
夜勤
勤務時間:16:30-9:30
時間 | 業務内容 |
---|---|
16:00-16:30 | 情報収集3 |
16:30-17:00 | 申し送り |
17:00-18:00 | 検温早 食事が出る人の介助 |
18:00-19:00 | 配膳 食事介助 |
19:00-19:30 | 検温 |
19:30-21:00 | おむつ交換・トイレ誘導 眠前薬の内服 |
食事休憩は19:00-22:00の間で時間をずらしながら30分とってました。 | |
23:00 | おむつ交換 |
24:00-2:00 | 仮眠休憩 1時間半~2時間程度 |
2:00 | おむつ交換 |
4:00-5:00 | 休憩(朝飯) |
5:00-5:30 | おむつ交換 |
6:00-7:00 | 検温 |
7:00 | 食事準備 検温 |
7:40-8:30 | 配膳 食事介助 |
8:30-9:00 | 申し送り |
9:00~ | 記録 |
消灯後の記載のない時間は記録とナースコール対応をしています。
点滴が少ないので、オムツ・トイレ介助の患者さんが少ないと落ち着いた夜勤になることが多かったです。
地域包括ケア病棟で働くメリット・デメリット
メリット
ほどよい慢性期
地域包括ケア病棟では急性治療が終えたが、もうすこし治療が必要な患者さんも入院します。
そのため療養病棟や、回復期リハビリテーション病棟とくらべ医療度の高い患者さんが入院しています。
さらに診療報酬加算の関係で療養病棟では使えない抗生剤が地域包括ケア病棟では使えるため、亜急性期の患者さんが入院しているのも特徴です。
急性期病棟ほど専門的な医療行為はないが、慢性期病棟よりは医療行為が多いという中間に位置する病棟です。
ほどよく医療行為があるため、急性期は苦手だが医療技術は身に着けていたい人、経験の浅い看護師でも働きやすい病棟でしょう。
慢性期病棟で働くメリットについては
も参考にしてください。
やりがいをもって働ける
地域包括ケア病棟では患者さんが退院するところに立ち会えます。
退院のとき見れる患者さんの笑顔がみれたり、「いままでありがとう」というねぎらいの言葉をかけてもらったりする機会が多くやりがいを感じやすいのか特徴です。
患者さんや家族とコミュニケーションをとる時間が多い
地域包括ケア病棟は急性期病棟よりも患者さんの出入りが少ない病棟です。
加えて日常生活動作のリハビリとしてトイレ介助や歩行介助を行うことも多く、患者さんとコミュニケーションをとる機会もが頻回にあります。
そのため急性期病棟より一人一人の患者さんとコミュニケーションをとる時間が増えるのです。
デメリット
急性期の看護がわからない
地域包括ケア病棟ではOPEや内視鏡治療など専門的な治療には関わりません。
また状態の悪い患者さんの緊急入院をとることもありません。
急性期の観察や術後管理など急性期の看護がしたい人にとっては物足りないと感じるでしょう。
センサーマット・コール対応が多い
地域包括ケア病棟はセンサーマット、ナースコールの対応が多いです。
リハビリをしていて移譲やトイレ動作に介助が必要な人や、認知症の方が多いからです。
ナースコール対応のために自分が予定していた業務を中断してナースコール対応をするのはよくあること。
自分の予定通りに業務がすすまないことにイライラしてしまう人もいます。
センサーマットやナースコール対応が苦手な看護師にとってはデメリットといえるでしょう。
退院調整をしてもフィードバックが得られにくい
患者さんに合わせた退院調整をしても退院後にうまく機能しているのかが確認できません。
一生懸命頑張ってもその結果がわかりにくいためやりがいを感じられないという意見がありました。
実際に私の病棟でも結果がわかりにくいという意見があったよ。
訪問診療にいっているおうちではDrがどんな様子か教えてくれることもあった。
地域包括ケア病棟勤務がおすすめの看護師
認知症の方の対応が嫌じゃない
地域包括ケア病棟はリハビリを行う、福祉サービスの調整など退院支援を行うことに特化しているという特徴から高齢の方が多く、認知症の割合が高いのが特徴。
入院による環境変化により不穏になる方、転倒リスクがあるのに一人で歩いてしまう方など多く、一般病棟よりもナースコール、センサーマット対応の割合が多いです。
そういった方にイライラするのではなく安心して療養ができるよう看護を考えられる人が向いています。
多職種連携に興味がある
患者さんが安心して在宅に復帰するためにはどうするかを多職種で考えるため、急性期病棟よりも多職種とコミュニケーションをとる機会が多くなります。
多職種連携に興味がある看護師にはもってつけの病棟でしょう。
医師とのかかわりも急性期とちょっと違うかも。
急性期だと治療の相談・指示受けが中心だけど、地域包括だとどこをゴールにするか医師と相談をしたり、薬剤調整の依頼をたり医師と一緒に考えることも多かった。
医療技術をほどほどに維持したい
地域包括ケア病棟では亜急性期の患者さんも多く、療養病棟や回復期リハビリテーション病棟比べると医療行為が多いのが特徴。
そのため急性期ほど命に直結する患者さんが多いのは嫌だけど、慢性期病棟にいって看護技術が衰えるのが不安な人に最適の病棟です。
逆に慢性期から急性期病棟に行くのは不安な人にとってはステップアップのための病棟として利用するのも言いでしょう。
そのため医療技術をほどほどに維持したい人におすすめの病棟です。
地域包括病棟のようなゆっくり働ける場所については
にも詳しくまとめてあります。
患者さんが地域に戻るための看護に興味がある
地域包括ケア病棟では患者さんが早期に退院できるよう、入院時から退院を見据えて行動していくことが求められます。
元の生活レベルの戻ることができるようどんなケアや指導が必要か、福祉サービスの導入はしていくのかなどを考えてるため、退院支援の知識が身に付くでしょう。
患者さんが家に戻るための看護に興味がある人にとっては勉強がしやすい環境です。
包括的に疾患を見れるようになりたい人
地域包括病棟は比較的病状の落ち着いている患者さんが入院していますが状態が変化することもあります。
亜急性期の患者さんの症状が悪化すること、既往にある慢性期疾患が悪化することがあるのです。
そのため入院の原因となった疾患にとらわれず包括的な視点で観察を行い、患者さんの状態変変化にすぐに気が付ける看護師が求められます。
地域包括ケ病棟で勤務することで包括的に患者さんをアセスメントする力が養われるでしょう。
地域包括ケア病棟に入院する患者さんのメリット・デメリット
地域包括病棟に入院するメリット
在宅復帰への準備ができる
患者さんにとってのメリットは自宅退院へ向けて準備ができることでしょう。
例えば骨折で入院をした場合、クリティカルパスにそって治療を行い治療が終了すれば退院となります。
しかし入院によってADLが下がっていたら、そのままの退院では不安があるでしょう。
地域包ケア病棟を利用することで、リハビリを行いADLの向上を目指すことや、福祉サービスを調えてから退院をするこが出来きるのです。
これらにより自宅へ退院する不安を軽減することができます。
在宅から一時的な入院ができる
地域包括ケア病棟は在宅で治療を行っている患者さんの受け入れも可能です。
症状の悪化や病状に不安がある場合や、家族のレスパイト目的には入院をする患者さんもいます。
地域包括ケア病棟に入院するデメリット
専門的な治療はできない
地域包括ケア病棟では高度急性期や急性期の患者さんの受け入れは難しいです。
そのため地域包括ケア病棟に入院中に状態が悪化した場合は、急性期病棟転出になります。
同じ病棟で治療を行えないデメリットがあります。
60日間の入院期間制限がある
地域包括ケア病棟は入院期間が60日間と限られています。
患者さんの在宅復帰を前提とする病棟であるため利用可能な期間には制限があるのです。
もとのADLに戻るまでリハビリを行いたいと思っても、基本的には60日以内に退院をしなければいけません。
もちろん退院後の生活で困らないよう福祉サービスの調整や、退院先の調整のサポートを行い、患者さんの不安を軽減して退院ができるよう支援をします。
地域包括病棟でリハビリをしたいと思っても入院を継続することはできないことはデメリットといえるでしょう。
地域包括ケア病棟に勤務する看護師の口コミ
4年間地域包括ケア病棟に勤務していた私の感想です。
地域包括ケア病棟のいい感想
地域包括ケア病棟で働いて良かったのは患者さんとゆっくり関われるとこと。
入院している時間が長いことや、介助で関わる機会がおおいためお話をする機会が多いです。
落ち着かない方は記録をしながら一緒に話をしたのはいい思い出です。
また入院が60日という制限があるので、どんなに苦手な患者さんがいてもずっと関わることはないという気の楽さがありました。
地域包括ケア病棟で大変だったこと
大変なのはナースコール、センサーマット対応です。
時期によりますが、多い時は夜勤でも座る間もなくコール対応をすることがあります。
加えてオムツや移乗の介助が必要な患者さんも多いです。
急性期より命に関わることは少ないため気は楽ですが、体力を使うため体が疲れるかんじでした。
病棟の特色として認知症の方も多く、病棟移動でせん妄や不穏の方の対応をする機会も多く大変でした。
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